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ショルダーストラップのレザー箇所の美しいコバ

選び方・素材

【すぐ剥がれるフチの正体】革の良し悪しは「コバ」に出る。日本と海外の仕上げの違いと、エルメスが美しい理由

数年使った革財布。フチのゴムのような部分がひび割れたり、ペロリと剥がれてしまった経験はありませんか?

実はあの「フチ(コバ)」にこそ、製品が長く美しく保てるかどうかや、作りの丁寧さがはっきりと現れます。

私たちはつい表面のデザインだけで判断しがちですが、本当に良いモノを見分けるヒントは、製品の断面である「コバ」に隠されているのです。

この記事では「日本の磨き」と「海外の塗り」を例に、コバの仕上げの違いについて紐解きます。

「分厚いコバ=丈夫」は間違い? すぐ剥がれてしまう本当の理由

使い込まれた財布のコバが一部剥がれている画像

お手持ちのアイテムの「コバ」を見てみてください。ゴムのようなものが、ぽってりと分厚く塗られていませんか?

一見すると「分厚いから丈夫そう」に思えますよね。でも、実はここに大きな落とし穴があります。

あの不自然な分厚さは、本来必要な下準備を省いてしまった証拠でもあるのです。

本来、美しいコバを作るためには、革の断面に何度もヤスリをかけて平らにする地道な作業が欠かせません。

しかし、手頃な価格の製品では、この手間を省いてしまうことが少なくありません。

ヤスリがけをしないと、革の断面はザラザラとした繊維が残ったままになります。

その凸凹を隠すために、塗料をたっぷりと乗せて覆い隠しているのが、あの分厚いコバの正体なのです。

どうして厚塗りのコバはすぐ割れてしまうのか。

では、分厚く塗っただけのコバは、なぜすぐに剥がれてしまうのでしょうか。

理由はとてもシンプルです。

革は本来、使う人の動きに合わせてしなやかに曲がる素材です。ところが、分厚く塗られた塗料は硬いため、革のしなやかな動きについていくことができません。

財布の折り目など、何度も曲げ伸ばしをする部分を想像してみてください。革は曲がろうとするのに、上の塗料は曲がらない。その負担が日々積み重なることで塗料が耐えきれなくなり、最終的にパキッと割れたり、ペロリと帯状に剥がれたりしてしまうのです。

コバの仕上げは、根本的に「2種類」しかない

革の裁断面(コバ)の処理にはいくつかの方法が存在しますが、美しさと耐久性を追求していくと、最終的な仕上げは大きく2つに分かれます。

それは、塗料で断面を覆う「塗り」と、革の断面そのものを摩擦で固める「磨き」です。

皮革業界において、「塗り」の最高峰はヨーロッパ、「磨き」の最高峰は日本と言われています。

エルメスが美しい理由。輪郭を際立たせるヨーロッパの「塗り」

エルメスをはじめとするヨーロッパの最高級ブランドの製品は、輪郭が美しく際立っています。その佇まいを支えているのが、「アスティカージュ」と呼ばれるコバ塗りの技術です。

アスティカージュは、単に塗料を乗せるだけの作業ではありません。

「ヤスリで断面を滑らかに整え、極薄の塗料を塗り、熱したコテで繊維を引き締める。そして再びヤスリをかけ、また極薄の塗料を塗る」という非常に緻密な工程を、完全に平らになるまで何層にもわたって繰り返します。

こうして作られた極薄の層は、革の動きに合わせてしなやかに曲がるため、簡単に割れたり剥がれたりしません。まるで絵画の額縁のように、製品全体をシャープで洗練された印象に引き締める効果を生み出します。

日本の職人が得意とする「磨き」。木目のような自然な一体感

一方、日本の職人が得意としているのは、色付きの塗料を使わない「切り目本磨き」と呼ばれる伝統的な技法です。

革の断面に、布海苔(ふのり:海藻から作られる糊)などの透明な専用液を塗布し、帆布(はんぷ:厚手のキャンバス生地)や木製の道具を使って何度も擦り合わせます。

その摩擦熱と圧力によって、革の繊維自体をツルツルに押し固めていきます。

塗料で覆い隠さないため、革が本来持つ層が、まるで木目のようにそのまま透けて見えます。表の革からコバまでがシームレスに繋がり、自然な温かみと、使い込むほどに増すエイジング(経年変化)を楽しめるのが、日本の磨きならではの特徴です。

高品質な「塗り」はヨーロッパの専売特許ではなくなった

以前は、極薄で均一なコバの「塗り」といえば、ヨーロッパの工房が持つ独自の技術とされてきました。しかし、設備の近代化が進む現代においては、その状況にも少しずつ変化が起きています。

世界中のブランドの生産を担う中国などの海外ファクトリーでは、ノウハウの蓄積が急速に進んでいます。その結果、すべてを熟練の職人の手作業に頼らずとも、最新の設備によって「均一でシャープな美しい塗り」が高い精度で実現できるようになっているのです。

本質は「どこで作られたか」ではなく「どう仕立てたか」

革製品を選ぶ際、「Made in Italy」や「Made in Japan」といった生産国を品質の目安にする方は少なくありません。

しかし現代において、重要なのはどこで作られたかではなく、「その製品にどれだけの手間がかけられているか」です。

今回解説したコバの仕上げも、品質を見極める大切な基準になります。緻密な「塗り」が施されているのか、時間をかけた「磨き」が施されているのか。断面の仕上がりを見ることで、その製品がどれくらい丁寧に作られているかが見えてきます。

表現したいデザインに合わせて、産地と技法を使い分ける時代

「どこの国で作られたか」という刻印だけで品質を測ることは難しくなっています。

絵画の額縁のような、カッチリと洗練された仕上がり(塗り)を求めるなら、最新設備を持つ海外ファクトリーへ。革の層が透けて見える、自然な温かみ(磨き)を求めるなら、独自の技術を持つ日本の職人へ。

本当に品質にこだわるブランドは、生産国にとらわれず、表現したいデザインに合わせてフラットに技術や産地を使い分けています。

長く使える革製品を見分ける、数ミリのディテール

次に革製品を購入する際や、お手持ちのアイテムを見る際は、表面のデザインだけでなく、ぜひ「コバ」の仕上げにも目を向けてみてください。

断面を確認するだけで、下準備を省いて分厚い塗料でごまかしているのか、それとも薄く均一に塗られている、あるいは綺麗に磨き上げられているのかが見えてきます。

たった数ミリの断面には、その製品にどれだけの手間がかけられているかが、そのまま表れます。この小さな事実を確認することが、ブランドや生産国に頼らず、本当に長く使える良いモノを見極める確かな術(すべ)となります。

職人の丁寧な仕上げ

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